タイでは毎年小規模な洪水が発生。しかし2021年は小規模で済むのか懸念されています。現在河川近辺に住む人々は被害を受けて避難している人も。政府の政策は2011年の大洪水からどのように対策がすすんでいるのでしょうか。
2021年10月中旬先週から回復したものの再度の連日の雨
9月末からの大雨から先週になっていくらかアユタヤの河川近郊に住む人々の住宅は水がはけてきたところでした。
ところがこの週末に再度の連日の雨。写真はアユタヤ田園風景のはずの場所は一面が水面に。
アユタヤ遺跡でさえも、至るところが侵入禁止とされており水浸しになっている。
洪水の対策はどうすすんでいるのか
先月末、タイ政府当局は首都バンコクを含むチャオプラヤ川下流の住民に注意を呼びかけた。連日の大雨で流域のダムからの放水が増やされ、川の水位が急激に上がっている。プラユット首相や閣僚らは「10年前の大洪水とは状況が違う」と指摘しつつ、何度も流域の視察に足を運び、危機感をあらわにする。
2011年の大規模な洪水は、雨期に入った7月ごろからの記録的な豪雨が主因で、800人を超す死者と1兆4000億バーツ(約4兆6000億円)規模の被害を引き起こした。
タイは5000社を超える日系企業が進出し、「日本産業界の裏庭」とも呼ばれる。
洪水被害が続く背景には政治の混乱もある。05年にはタクシン政権が2000億バーツ規模の治水計画を打ち出したが、06年のクーデターで白紙になった。大洪水後の13年に国際協力機構(JICA)の技術協力を受けて策定した包括的な洪水管理計画(マスタープラン)も、14年のクーデターで再び棚上げされた。
プラユット現政権が新たな20カ年の治水計画をまとめたのは18年末のことだ。タイ国家水資源管理室によると、洪水対策の軸となる2つの放水路のうち、1つ目が完成するのは早くても26年。もう1つはいまだ実現可能性調査の段階で、予定していた25年の完成は困難だ。関係者は「基本的な状況は11年から変わっていない。同じことは起こりうる」と語る。
タイ最大の河川であるチャオプラヤ川は勾配が小さく、水が流れにくい。専門家は「利根川の10倍の流域面積をもつが、60分の1の水しか流せない極めて特殊な川」と指摘する。定期的に起こる洪水はかつて農地を肥沃にしてきたが、工業化が進んだ現在ではデメリットがはるかに大きい。
足元でも集中豪雨などで洪水が頻発する。タイ内務省によると、9月下旬から少なくとも32県で洪水が発生し、29万世帯以上が浸水などの被害を受けた。当局は堤防の建設や調整池の確保など対策は講じてきたと強調。排水管に詰まったゴミの除去や水門の修繕などで排水能力の向上を図るが、対応は追いつかない。
大洪水で多額の保険金の支払いに直面した保険業界は「洪水リスクが低減しているとは言い難い」と冷ややかな視線を向け、保険引き受けに慎重な姿勢を崩さない。
タイ国東京海上火災保険の林将大シニア・リスクコンサルタントは「放水地域とされていたバンコク東部に空港が建設されるなど、当初計画と乖離(かいり)が生じている」と指摘。「タイに進出する日系企業の数は増えており、部品や原料の現地調達も進む。万が一の際の被害規模はむしろ大きくなっている」と警告する。
引用元:日本経済新聞 タイで洪水頻発 放水路整備、早くて5年後
筆者もタイの洪水の件では仕事の上でよく生の話を耳にします。
日系の保険会社の対応が良いお陰でかなりの速さで復旧を成し遂げました。しかし今度また再発して同様の対応ができるのでしょうか。むしろ2011年にあれだけの大惨事を引き起こしておきながらいまだに洪水管理計画がすすんでいないというのは相当な不信感をえるはずです。
実態としてはこの当時に被害を受けた日系企業は他国に拠点変更した企業もあれば同じタイでも東のエリアへ移した企業も多数。
アユタヤエリアに工場を配置する会社というものは必ず新規取引先からは洪水の対策について問われます。
今回まだアユタヤの大型工業団地の被害はありませんが、実際その会社に勤める従業員の家屋は被害を既に受けています。
タイ国内にお住まいの方ならお分かりでしょう、タイの道路整備工事というものは何年かかってもなかなか完了しない。現在のこの早くて2026年という洪水対策の放水路。はたして本当にすすんでいるのでしょうか。